うちの希一の髪は、ずっと私が切っていた。
バリカンで。
自分の髪も家で切るので、そのついでに始めたのがきっかけだった。
最初の頃は、首のあたりを刈ると、
「うわっ、くすぐったい!」
なんて嫌がっていた。
でも、そのうち、
「お父さん、髪切って。」
と、自分から言うようになった。
何年も、家で切っていた。
この前ついに希一は美容院へ行った。
中学生になって、友だちも美容院へ行くようになったらしい。
家族みんなで、
「かっこいいじゃん。」
なんて言っていたら、
それが定着してしまった。
まぁ、美容院の方がかっこよくなるのは分かる。
でも、ちょっと寂しい。
「あれ?
俺、クビ?」
そんな気分。
最近は、私もヒゲ用のバリカンで頭を刈るようになったので、髪用のバリカンは出番がない。
あいつも、
「最近、仕事ないなぁ。」
なんて思っているかもしれない。
子どもが大きくなるって、何か特別な出来事があるわけじゃない。
親がやらなくなることが、一つずつ増えていくことなのかもしれない。
散髪も、その一つだった。
まぁ、そのうち、
「やっぱり家で切って。」
なんて言う日が来るかもしれない。
……来ないかな。
とりあえず、バリカンは捨てずに取っておこうと思う。
知らんけど。